本記事では、意思決定支援の一分野として注目されるAIエージェントの応用事例を紹介します。
取り上げるのは、株式投資において複数の投資スタイルを模倣し、判断を集約する仕組みです。現実の市場データを用いた検証を通じて、複数の視点を扱う設計の特徴とその動きが見えてきています。

背景
株式投資において、「何を買うか」「いつ売るか」といった判断は、常に簡単ではありません。市場の動きは複雑で、人間の直感や経験だけでは捉えきれない要素も多く存在します。多くの投資家は自分なりのスタイルや指標を持ち、日々変化する情報に向き合いながら意思決定を繰り返しています。
こうした投資の現場に、AIはどう役立てられるでしょうか。
過去には、データから株価の変動を予測するモデルや、決まった手順に沿って投資判断を下す自動売買システムが作られてきました。しかし、それらは往々にして市場の複雑な変化に柔軟に対応できず、特定の状況にしか通用しないという課題を抱えています。
そこで今回研究者らは、「多数の仮想投資家をつくり、それぞれ異なるスタイルで投資判断を行わせる」という新しい発想を試みています。
個々の判断を観察し、全体としての傾向やずれを分析することで、より的確なポートフォリオ構築を目指すというものです。
LLMを活用して投資家の思考プロセスを模倣し、それを多数並列に走らせることで意思決定を繰り返させます。その結果を全体として集約し、投資判断につなげようという狙いです。
注目されるのは、「エージェントの数が増えるほど、判断の質が高まるのではないか」という仮説です。512体もの仮想投資家が使われており、これは実際の企業組織に匹敵する規模です。
なお、このようにAIを単なる予測の道具ではなく、複数の思考を束ねて意思決定に活かすためのフレームとしてとらえる動きは、投資分野に限らず多様な応用可能性を秘めています。
LLMを使って業務に新しい視点を取り入れたいと考える方々にとっても、今回の研究は示唆に富むものといえます。
さて、研究者らの発想がどのように実装され、どんな結果をもたらしたのか。詳しく見ていきます。
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